【大正浪漫譚】器から紐解く、大正時代の食卓

大正浪漫譚

こんばんは、宮寺理美です。

先日、ご近所にあった素敵な骨董屋さんが閉店してしまいました。
和食器、特に明治時代以降のものを多く取り扱われているお店で、
品物の取りそろえ方も、気さくな雰囲気の女将さんも素敵でした。
懇意にしているお店の閉店は、とても寂しいです。



閉店に気付いたのが遅かったので、ご挨拶ができなかったのも心残りです。
またどこかでお会いできることを願いながら、
今夜は、皿にまつわる大正ロマンのお話をしてみたいと思います。

***

人々の生活になくてはならない、皿。
皿には、その時代の文化や流行だけでなく、食生活の変化も反映されています。
特に、明治から大正時代は、西洋文化の流入と大衆化、そして工業の発展により、
デザインや素材も、従来とは違うものが流行しました。

日本を代表する陶磁器と言えば、伊万里焼、有田焼、九谷焼などでしょう。
長い歴史を誇る陶磁器たちは、時代や地域によってさまざまな顔を持っていますよね。
丁寧に仕上げられる皿の他にも、実用品の「常滑焼」などがあるそうです。
大変奥深い世界で、まだまだ知らないことがたくさんあります。

既に長い歴史と深いノウハウのあった「皿」という存在に、
変化が訪れた、近代化の時代。

西洋文化の流入は、明治時代中は富裕層にとどまっていた印象ですが、
大正時代になると、徐々に市井の人々にも広まります。

当時の本や雑誌には、洋食や中華料理の項目が度々登場し、
独特な食器の使い方などのレクチャーが掲載されています。
はじめての洋食は、つまりはじめての洋食器だったわけですね。

はじめてナイフやフォークを目の当たりにした当時の人々は、
わくわくしていたのでしょうか、それとも緊張していたのでしょうか。

徐々に変わる食生活。
それに連動するように変わっていく、皿。
けれど、変化の要因はそれだけではありません。
明治時代から大正時代にかけての工業の発達もまた、大きな影響を及ぼしました。

特に革新的だったのは、冒頭でお話しした「印判皿」でしょう。
転写技術で製造された皿のことで、
デザイン性に富んだ図案の皿が、安価に流通するようになりました。
私が好んで購入するのもこの時代の印判皿が多いです。
今でも比較的安価に購入できるということは、
当時はきっと、相当な数が流通したのではないでしょうか。

デフォルメされた千鳥や桜は、古典的な図案でありながら、
どこかモダンでハイカラな雰囲気。
転写なので時々途切れているところも、当時ならではの雰囲気があります。
鮮やかなコバルトブルーの釉薬は、古くから東アジア圏で愛された色ですが、
西洋での「シノワズリ」の影響も感じられる色合いですね。

ただし、こうしたアンティークの印判皿は、
食品関係の法律がきちんと制定される前の時代のものです。
転写の過程で鉛を使用している可能性もあり、見た目で判断することが難しいため、
普段使いが目的での購入には、少し注意が必要です。

私は酸性の食べ物(ワインや酢)をのせることや、加熱も避けていますが、
こうした対策は、あくまで私個人の対策であること、
上記の理由から、購入や使用は推奨しないことを、ご承知おきいただければ幸いです。

***

大正時代になると、ガラスの器も流行します。
ガラスそのものは、それよりもずっと前からありますが、
工業技術の発達から、大正時代頃からガラスは徐々に安価になり、
窓ガラスやガラスの器が、市井の人々の手に渡っていきます。
不規則な独特のゆがみのある当時のガラスは、よく「大正ガラス」と呼ばれます。


乳白色のグラデーションが美しい器は、旅先でたまたま出会いました。
苺ミルクのような色合いにひとめぼれ。

このような乳白色のガラスの器の他にも、
ウランガラスの器や、西洋風のデザインのモダンなお皿など、様々な素材のお皿や器が食卓を彩りました。
私の手元にはウランガラスの器はまだないのですが、
いつか素敵な器と出会えるのを楽しみに待っているところです。

***

100年前の味覚を彩った、新時代の「皿」。
そこには、当時の流行や技術だけでなく、
人々が何を食べ、どんな生活をしていたのか、
そして、その時代の食卓の様子までもが残されています。

1枚の皿に残された、暮らしの痕跡。
その向こうにある100年前の暮らしを、
これからも少しずつ、紐解いていきたいです。

もうなくなってしまった骨董店で出会った印判皿は、
これからも、私の生活を彩りつづけます。

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時を超えて紡がれる物語『大正浪漫譚』は、日曜の夜にお届けしています。
また来週お会いしましょう。

宮寺理美

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