【ファッションとガールズヒストリー】大正の夢 秘密の銘仙ものがたり展

文化事業紹介


それはむやみに光る絣であった。
幼稚な彼の眼には光らないものより光るものの方が上等に見えた。
番頭に揃いの羽織と着物を拵えるべく勧められた彼は、遂に一匹の伊勢崎銘仙を抱えて店を出た。
その伊勢崎銘仙という名前さえ彼はそれまでついぞ聞いた事がなかった。

ー夏目漱石『道草』



こんにちは、宮寺理美です。
今日は文京区にある弥生美術館で、明日9月30日から始まる素敵な展覧会の内覧会にお邪魔させていただきました。
今回のテーマは銘仙(めいせん)です。
実は、私がアンティーク着物にドハマりしたきっかけは銘仙だったので、
今回の展覧会は本当に楽しみにしておりました。

とはいえ、普通の生活を営んでいても、銘仙というものに触れる機会はあまり無いかもしれません。
昔は蒲団皮なんかにも使われていたのだそうです。
銘仙は平織した絣の織物です。
屑繭と呼ばれる、規格サイズより小さい繭から引いた糸で織った生地で、絹織物としては大変リーズナブルでした。
銘仙は化学染料を称したド派手で大胆な色柄で、アンティーク着物愛好家たちのハートを鷲掴みにしています。



実はこの銘仙、乃木希典が1908年(明治41)が学習院院長に指名された後、
女学部の制服として採用されたというエピソードがあります。
当時、学校教育を受けられる身分の女性は超絶お嬢様です。
乃木希典の掲げた教育方針は「勤勉」そして「質素」です。
そこで、豪華な友禅などで登校するお嬢様たちの服を、質素な銘仙に指定します。
しかしその後、銘仙産地では生産者たちが創意工夫を凝らし、新しい技法が開発されました。
結果的に、銘仙はどんどんお洒落になっていきます。
しかしこのエピソード、しっかりした出典が明記されている資料があまりありません。
ちょっと古めの都市伝説の可能性もあります。
しかし、銘仙がどんな着物なのかがよく分かるエピソードです。
銘仙は「女性たちの反骨精神」なのかもしれません。

明日9月30日からスタートする「大正の夢 秘密の銘仙ものがたり」展の概要でも、
銘仙でみるgirl’s History
という一文が見られました。これにはちょっと感動です。

弥生美術館は、竹久夢二美術館と併設されています。
1回分の入場料でどちらも見る事ができる、お得感がすごい美術館です。
最初はちょっと戸惑うかもしれませんが、すぐに慣れちゃうから大丈夫です。
(ここに引き寄せられる方は、きっとこれから何回もここに足を運ぶことになります。笑)



「大正の夢 秘密の銘仙ものがたり」展は、受付を済ませてからすぐの、
1階展示室からスタートします。


1階展示室にはロマンチックな銘仙がズラリ。


蝶や蔦の葉、孔雀など、当時流行したヌーヴォー風の図案の銘仙も。
帯留めや半襟などの小物にもぜひ注目していただきたいですが、
個人的には日傘がとっても気になりました。
昔の日傘って、本当に手が込んでいて可愛いんですよね…



2階展示室にはモダンでクールな銘仙が並んでいます。
こちらにはアール・デコ風の図案の銘仙が多かったです。
1階展示室は甘めなら、こちらは辛めですね。



着物だけでなくポスターなどの展示もあり、大変見ごたえがありました。
今回の展示は前期と後期で着物が結構入れ替わるのだとか。
後期展示も大変楽しみです。


ちなみに、竹久夢二美術館・弥生美術館は、
東大の本郷キャンパスの弥生門のすぐ近くなのですが、
根津駅から向かうと結構な坂道を登らないといけません。
が、東大前駅や本郷三丁目駅からキャンパス内を通ると、下り坂で向かうことができます。
これからの季節は銀杏並木がとても綺麗ですよ。
ただし、銀杏爆弾には要注意です。

それと少々の注意事項ですが、
竹久夢二美術館・弥生美術館にはエレベーターやエスカレーターがありません。
小さなお子様をお連れしようとお考えの方や、足が不自由な方は、
ホームページのフロアガイドをご覧いただき、ご一考ください。


「大正の夢 秘密の銘仙ものがたり」展
会  場 弥生美術館
会  期 2023年9月30日(土)~12月24日(日)
開館時間 10:00~17:00(最終入館16:30)
休 館 日 月曜日 ただし、10/9(月・祝) 開館、翌10日(火) 休館、
11/14日(火) 中間展示替えのため臨時休館
料  金 一般 1000円 大・高生 900円 中・小生 500円 
*竹久夢二美術館と2館併せてご覧いただけます。
アクセスはこちらをご覧ください。


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