在水一方 紫陽花の季節に想う対岸の友人

ご挨拶&お知らせ

こんにちは、宮寺理美です。
各種のSNSでは既にお知らせしていますが、
この度、私の友人であるキリちゃん、こと黄可児女史の新書、
『在水一方 在日本尋探中国歴史』の巻頭紹介文を寄稿いたしました。
子供のころから本を読み、いつか本に携わる仕事がしたいと夢見てきた私にとって、
初の仕事が海外出版となったのは記念すべきことです。
SNSに書くには長すぎる今の気持ちを、ここにしたためておきたいと思います。

キリちゃんは私の古い友人で、実は初めての海外のお友達でした。
彼女は出会った当時から日本語が堪能で、確かファーストコンタクトは、
大阪の可愛いカフェ、北浜レトロの事をInstagramのDMで質問してくれた事だったと記憶しています。
長い間、相互フォローのSNS友達として交流した後、初めて会ったのは小雨の降る浅草でした。
当時、浅草十二階の痕跡が新たに発見されたニュースが報道されたばかりで、
私たちはニュースの写真を見ながら場所を予測して特定に成功しました。
しかも、肌寒い小雨の中です。
よくやるなぁと自分でも感心しますが、
私たちは多分今でも、機会があれば同じ事をやると思います。笑
今は無きアンヂェラスでお茶をしたのもよい思い出です。
歴史ある喫茶店がまさか駐車場になってしまうなんて、あの時は思いもよりませんでした。
でも、こんなに時が過ぎても、
キリちゃんと変わらず良き友人でいられることも、あの時は想像していませんでした。

土方さんと一緒に写真撮ってました。歴オタ感溢れる初めての会合

キリちゃんはその後も何かと東京に来てくれて、
マニアックな博物館に一緒に行ったり、
日本三大水攻めの忍城に行ったり、
辰年だった2023年には都内の龍神スポット巡りをしたりと、
「誰が行くねん」と突っ込まれるような場所ばかり行きました。
ベタな観光地を提案すると容赦なく却下されます。
それもそのはず、キリちゃんはとっくのとうに48都道府県を制覇した猛者ですから。
最近会った時には、室町時代の生首の持ち方を実演を交えつつ教えてもらいました。
どんな風に興味を持ってどんな場所でそんな情報を得ているのか、
私には分からない事ばかりで、会うたびに驚きの連続です。
今回の新書のテーマも、キリちゃんならではの視点が存分に活かされています。

めっちゃ楽しそうですがこの日は38度くらいの気温でした


私が中国のSNSを始めるきっかけの一つも、実はキリちゃんでした。
初めて会った時、私たちは2人で着物を着ていたので、
海外の観光客の方に一緒に写真を撮ってほしいと声を掛けられたんです。
お恥ずかしながら当時の私は片言の英語すらワタワタする有様だったので、
堂々と相手の目を見て会話をするキリちゃんの国際文化人としての自覚に感銘を受けました。
しかも、そのあとキリちゃんは、
観光客の家族連れのおばあちゃんと広東度でいきなり会話を始めたんです。
「植民地時代があったから、マレーシアのあのくらいの年代の人は、広東語が分かる人が多いんだよ」
と聞いて、私は自分の無知を思い知りました。
歴史の教科書に書いてある事が今の自分にどんな風に影響しているのか。
それまでの私は、そんな事を考えた事は1度も無かったんです。
その後はひたすら勉強の日々です。
世界史、中国史、日本史、韓国史、民俗学、
地味な表紙の分厚い書籍を5冊ほどは買って、ひとまず全部読みました。
もちろん全部は覚えてないですが、それでもあの頃よりはだいぶマシになったと思います。
なぜ私が歴史の本にそれほど執着したかと言うと、
歴史が社会を作り、社会が文化を作るという事を、
キリちゃんとの対話を通して学んだからです。

「中国版Twitter」と言われていた微博を始めたのは、その後の2018年のことです。
以前よりマシになったとは言え、私はまだまだ無知でしたが、
それでも歓迎してくれる中国のフォロワーがいた事は、私にとって驚きでした。
でもやはり、事前勉強がある程度できていたのは私にとってとても意味のある事でした。
微博を始めた当初、フォロワーの方から、
「これからあなたに対して悪い事を言う人もいるかもしれない、
でもあなたが悪い訳じゃないから気にしないで欲しい」
という旨の事をDMで言われたことがありました。
その時、どんな事を心配されているのか、具体的に言われなくてもすぐに理解できたのも、
こうした事で、事前にある程度の勉強ができていた事が大きかったと思います。

私たちは辿ってきた道こそ違いますが、
きっとお互いに、似たようなことを感じていたのだと思います。
私には海外在住歴はありませんが、微博の影響で中国の友人がとても増え、
自分とルーツが異なる人に囲まれる機会も大変多くなりましたし、
SNSはほぼ毎日更新するので、見るたびに国外の情報に触れる事になります。
そんな時に強烈に感じるのは「私は日本人なんだ」という事実です。

何をそんな当たり前の事を、と思う方もいるかもしれませんが、
日本のコンテンツしか見ず、日本人としか交流を持っていなかった時には、
こんな風に自分のルーツや出自、遺伝子、生活習慣を自覚する機会が、大変少なかったんです。
私はこうして、国外のありとあらゆるものに教えられなければ、
自分が日本人だという自覚すら、ずっと希薄なままだったと思います。

今回のキリちゃんの新書には、巻頭に可愛いデザインで日本地図が印刷されていて、
どこにどんな史跡があるのか一目で分かります。
最初に見た時の率直な感想は「え、こんなにある?」でした。笑
楊貴妃や妲己などの伝説が伝わる地、
中国で国父と呼ばれ親しまれる孫中山先生と支援者たちとの物語、
江戸幕府と中国思想の繋がりまでも紐解かれており、
丹念に取材したことがよく分かります。
もちろん全てキリちゃんが自力で取材しており、
両国にまたがって活動するキリちゃんならではの視点での取材は
「そう来たか!」と思うようなものばかりです。
こんな視点を持つことができたのも、
キリちゃんが日本に対して、深い興味と親しみを持ち接してくれた結果なのだと私は思います。

紹介文の寄稿にあたり、キリちゃんが私に与えた称号は「日籍中日文化交流推廣網紅」、
網紅とは中国語でインフルエンサーの事です。
ず、ずいぶんデカく出たな!と思いましたが、笑
このデカい肩書に負けぬよう、これからも精進します。

紹介文の中で、私は文化を大河に例えさせていただきました。
本書のタイトルは『在水一方』、水のほとりにあり。
私たちは対岸でこの大きな川の流れを見続けました。
時に川の水に吞み込まれそうになることもありましたが、
今こうして互いに手を取り合えるのも、この大きな川がここに存在しているからです。
私たちがお互いに目指すのは相互尊重の関係です。
尊重と言うと難しく思えますが、実は何も難しいことはなく、
互いの大切なものを互いに大切にすることだと私は思います。
キリちゃんの書いたこの一冊は、
相互尊重の関係性をさらに深めるための大きな一歩になるに違いありません。
私はこの本をぜひ日本語で読んでみたいです。
万一出版関係の方が見てくださっていたら、私の友人Kiri Chloe Wongにぜひご連絡ください。


紫陽花は中国語だと「繍球花」と呼びます。
漢字のセレクトがとても風情のありますよね。
中国にも紫陽花スポットはたくさんあるのに、
私の中国SNSのフォロワーは、わざわざ紫陽花の季節に日本旅行に来る人が多いです。
中国の北方では紫陽花を鑑賞する機会があまり無い事や、
日本の紫陽花は文学的で耽美なイメージがあるのが理由なんだとか。
土の質で色を変える紫陽花は、形こそ似ていても多種多様な花を咲かせます。
まるで私達の文化のようではないか、と、時々思う事があります。
紫陽花の花が咲く季節にこの本が出版されたことも、偶然ではなく必然のように感じます。


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