レトロ

大正浪漫譚

【大正浪漫譚】百貨店が見た夢 ー 杉浦非水と三越百貨店

おや、先日購入した物がポストに届いたようだ。冷え込む雨の休日、二度寝を満喫していたが、いい加減に目を覚まそうかと思ったら、スマホの通知が来ていた。 最近の東京は、私にとってすっかりつまらない街になってしまった。円安で訪日観光客が増加傾向なの...
大正浪漫譚

【大正浪漫譚】大正の旅情、車窓に映る新時代の時間

名古屋駅の新幹線ホームから見える空には、もう月が登っていた。私は夜の移動が結構好きだ。変わって行く空の色や、暗闇の中を流れていく流れ星のような民家の光を眺めるのも好きだし、徐々に近づいてくる東京のビル群は、暗闇の中だとなんだかサイバーパンク...
大正浪漫譚

【大正浪漫譚・愛知編】幸福は我が心にあり ー 橦木館が語る大正幸福論

「ここにはね、トランプのうちハートだけが無いんですよ。幸福は我が心にあり、が彼の処世訓ですからね。ハートは自分で持ってるってことかもしれません」この可愛らしい洋館に着いたときは、白髪の紳士からこんなキザな言葉を聞く事になるとは全く思っていな...
大正浪漫譚

【大正浪漫譚・愛知編】川上貞奴が紡いだ近代女性の軌跡

「うわぁ、眩し…」私はその色鮮やかなステンドグラスの前で思わずつぶやいた。名古屋市内には個性的で美しい近代建築が点在する、と小耳には挟んでいたが、まさかこんなに個性的なんて。文化のみち二葉館と呼ばれるその場所は、おとぎ話の挿絵に登場しそうな...
大正浪漫譚

【大正浪漫譚・愛知編】スダレ煉瓦の里帰り ー 明治村に佇む帝国ホテル

その場所に一歩足を踏み入れた私は、思わず息を呑んだ。ここがあの帝国ホテル…そう思うと足が小刻みに震えそうだった。旧帝国ホテルの設計者が、大正時代を代表するモダンな建築を生み出したフランク・ロイド・ライト氏であることは有名だが、実は更に伝説が...
大正浪漫譚

【大正浪漫譚・神戸編】ライト建築 ー 光と風のモダンライフ

「この坂やべぇな」「嘘でしょ…勘弁して…」神戸に到着してから坂道を嫌というほど歩いた私は、思わずつぶやいた。芦屋川沿いを歩いている時は気持ちの良い道だと思っていたが、その先のライト坂はかなり急だった。神戸近郊には本当に坂が多い。一歩一歩が重...
大正浪漫譚

【大正浪漫譚・神戸編】港町が開く異国への扉

その喫茶店の重いドアを開いた時、私は思わず小さな感嘆のため息を漏らした。蔦の絡まる赤煉瓦の喫茶店は、物語の始まりを予感させる美しさだった。しかし、その美しさとは対照的に、私の身体はぐったり疲れ息は上がっていたー その理由は10分ほど前に遡る...
大正浪漫譚

【大正浪漫譚】アイスクリームのローマンス

重い玄関の扉を開けると、むわっと熱い空気が顔を直撃した。配達員に感謝しなければいけないと思いながら、玄関先に置かれた小さめの段ボールを回収する。もう9月だと言うのに、まだまだ外に出る気にならない気温だ。届いたのは、私が通販サイトで注文したア...
文化事業紹介

【悪魔に魅了された?芥川龍之介の生涯を追う】たばこと塩の博物館 特別展「芥川龍之介がみた江戸・東京」

そこで、この煙草は、誰の手で舶載されたかと云ふと、歴史家なら誰でも、葡萄牙人とか、西班牙人とか答へる。が、それは必ずしも唯一の答ではない。その外にまだ、もう一つ、伝説としての答が残つてゐる。それによると、煙草は、悪魔がどこからか持つて来たの...
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