大正浪漫譚

大正浪漫譚

【大正浪漫譚・神戸編】港町が開く異国への扉

その喫茶店の重いドアを開いた時、私は思わず小さな感嘆のため息を漏らした。蔦の絡まる赤煉瓦の喫茶店は、物語の始まりを予感させる美しさだった。しかし、その美しさとは対照的に、私の身体はぐったり疲れ息は上がっていたー その理由は10分ほど前に遡る...
大正浪漫譚

【大正浪漫譚】大正乙女が恋した日傘

「蔵前なんて久しぶりに来たなぁ、なんかキレイになったね」「確かに、昔こんなんじゃなかった気するな」5月の明るい日差しが降り注ぐ路面に、日傘の影が揺れる。陽の光と青い空に、日傘の縁取りのレースが映えて、見上げるだけでうきうきと幸せな気持ちにな...
大正浪漫譚

【大正浪漫譚】断髪ヘアを叩いてみれば大正ロマンの音がする

耳のそばでさくさくと軽やかな音がし、自分の黒い髪がはらはらと落ちていくのが視界の端に見えた。「本当にいいんですか?」と何度か聞いたのち、美容師の山田ちゃんは私の髪に鋏を入れた。私の髪質はちょっと難しいらしい。カラーリングもパーマも思うように...
大正浪漫譚

【大正浪漫譚】アイスクリームのローマンス

重い玄関の扉を開けると、むわっと熱い空気が顔を直撃した。配達員に感謝しなければいけないと思いながら、玄関先に置かれた小さめの段ボールを回収する。もう9月だと言うのに、まだまだ外に出る気にならない気温だ。届いたのは、私が通販サイトで注文したア...
大正浪漫譚

【大正浪漫譚】はいからさんが夢見た自由

かげろうゆらゆら小石川、ハーフブーツに海老茶の袴、頭のリボンもひらひらとこれで決まりの女学生、わたくし花の17才 「お、パソコンで動画見てるなんて珍しいな、なんかあったん?」休日にコーヒーを淹れる事を趣味としている夫が、私の分のカフェオレを...
大正浪漫譚

【大正浪漫譚・銀ブラ編】銀座の夜に蝶が舞う

カフェーパウリスタでのんびりしていたら、もう陽の陰る時間になっていた。あと1時間もすれば、路面に立ち並ぶブランド店のロゴも、煌々と輝き始める時間だ。「いやぁ、今日は歩いたね、帰ろっか」「あれ、理美、なんか行きたい店ある言うとったやろ」「え、...
大正浪漫譚

【大正浪漫譚・銀ブラ編】鬼の如く、恋の如く、地獄の如く

夫と出かけると、大抵いつも鬼の行軍の如く歩く事になる。今日もアンティーク着物で銀ブラ=銀座でブラジルコーヒーを飲み、そのまま帰るつもりだった。しかし、夫が博品館に行きたいと言い始め、私はGINZA SIXに気になっていたコスメブランドの店舗...
大正浪漫譚

【大正浪漫譚・銀ブラ編】愛と放浪と中華そば

「萬福」と大きく書かれた看板は、いかにも町中華な太字のフォントだ。まだ開店時間前だったが、開店を待っている人もいた。「すごい、開店待ちの人もいるね」「行列やないけん、待っとけばよかろ」夫とそんなことを言いながら外壁の掲示物に目をやると、創業...
大正浪漫譚

【大正浪漫譚】浪漫譚のはじまり ー 東京と大正浪漫

こんにちは、宮寺理美です。これまでは過去に書いていたnote記事をベースに、長めの解説などをこちらに書く事が多かったのですが、内容が重すぎるなぁと感じ始めていたのものあり、今後は「楽しみながら読んでいただける」を目指してみようと思います。と...
error: Content is protected !!
PAGE TOP